【後編】国内で貴重なスポーツビジネス遍歴をもつ柏崎さんに聞く、企業目線のスポンサーシップ活用術
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【後編】国内で貴重なスポーツビジネス遍歴をもつ柏崎さんに聞く、企業目線のスポンサーシップ活用術

プラスクラス・スポーツ・インキュベーション +C lab

NTT ドコモの「DAZN for docomo」だけではなく、KONAMI、airweave、OAKLEYなどグローバルで、大小数多くのスポンサーシップビジネスやスポーツマーケティングに携わってきた、MANAGEMENT-K 代表の柏崎健太さんにお越しいただき、国内外の企業目線でスポンサーシップについて大いに語っていただきました。

柏崎さんは、ご自身が代表を務めるコンサルティングカンパニー「MANAGEMENT-K」を経営しながら、NTTドコモの社員としてもご活躍されています。

前編・中編では
・はじめに(柏崎さんの自己紹介)
・自分らしいキャリアの積み方
・企業側がスポンサーシップする理由
・企業側はどのようにスポンサーシップを活用すべきか
についてまとめています。まだ読んでない!という方はこちらからご覧ください。

後編では、柏崎さんがどうやってスポンサーシップの目的を明確にすることができるようになったのか、またスポンサーシップと企業の相性スポンサーシップビジネス界隈に求める人材などに触れています。ぜひ最後まで御覧ください!
*インタビュー日:2021年12月8日

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どうやってスポンサーシップの目的を明確化できるようになったのか


平地 (中編の最後に)目的を明確化するというお話が出ましたが、それ自体も結構難しいのかなと思うんですけど、どう設計してきたか、どんなアプローチ、プロセスになるんでしょうか。

柏崎 明確にできるようになったのは3社目以降だと思うんです。たぶんこういう話を読み手と聞き手はどういう風にとらえるかだと思うんですけど、最初からできるわけないんですよ。ある程度経験というのは必要になってきます。

僕が初めて日本シリーズの協賛をやった時に、「わかりました?」と聞かれてもわからないんです。ロンドンオリンピックのプロジェクトをした時にブランド力をどのくらい上げるかってターゲットはあったけど、そんなの事例も少ないからやってみないとわからないんです。経験で「あの時こうだった」「その時そうだったな」というのは結局、選手の契約金と一緒で、結構「人」なんですよね。人の頭の中にも紐付くから、その人の価値が出てくるのかなと最近思います。

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平地 それはそうですね。

柏崎 それがパパっと出てくるようになったのは3社目以降ですね。「これってどんな感じですか」と聞かれたときに、「たぶんこのぐらいだな」とパッと出てくるかどうかは、個人的にはある程度経験が必要なんじゃないかなと思うんです。

そこをある程度大事にするべきじゃないか、というのは個人的には思います。仕事の中にKPIの設定などあるんですけど、多くはやったことがない会社がKPIを設定しますから、机上の空論でしかないように見えますね。まずは目的を定めて、骨組みを作ったらやってみることだと思います。その際、その会社の文化やフェーズによると思いますが、ジョブローテーションなどでコロコロ人が変わったり、平気で未経験の人が配置されるような会社の場合は、それなりの数字を弾いておくことがお勧めではあります。「拠り所」を作るという意味で。

スポーツビジネスで今どういう人が活躍できますかという質問にも繋がるのですが、今のフェーズでは特にコンサル会社とかでマーケットリサーチからビジネスディベロップメントの経験のある人というのは、組み立てから数字弾きまでできるので重宝される気はしますね。形や前例のない条件や環境でも可視化できるものをつくるということですよ。

平地 まだ無形のものをということですよね。

柏崎 そうです。よくフェルミ推定とか言いますけど、そういうことができる人は今の業界フェーズでは重宝される。これから先どうなるかはわからないですが。

平地 そうですね。難易度が高いし再現性も低い、難しいところが結構あるんだなというのを今肌で感じさせてもらってるところです。

柏崎 やっぱり数字やロジックって、人を納得させやすいんですよね。転職する際のレジュメなんかもそうですけど。正直、僕はあんまり好きじゃないです(苦笑)。左脳と右脳だったらどちらなんですかと言われたら右脳系なんで。ただ、絶対に必要な能力です。今の所属先はこの文化が非常に強いので、鍛えられてますね。僕自身も食らいついてます。

でも結局、スポーツって人が感動したり、エモーショナルというか人の感情に訴えかけたりするコンテンツじゃないですか。それが複雑なんですよ。ライブや演劇のように「次こうなるな」「最後にこうなるんだろう」と予想できるものではなくて、「そんなことがあるのか」とか予測がつかない。

だからそういう読めない感情、安堵感とか興奮とか一緒に応援したくなるとか複雑な感情がいろいろ絡みあう、期待値のコントロールできない読めないコンテンツなんです。その魅力を形成的に会社の事業と紐付けることが会社の満足感につながるのではと思うんですよね。

平地 ほんとその通りで、結末が決まっていないからこそ面白いわけじゃないですか。

柏崎 ビジネスマンとしてどうなんだよと言われてしまいますが(笑)、数字、数字と言うなよとは思うんです。

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平地 事業会社的には負けたくないですからね。

柏崎 僕がもしオーナー企業の社長だったら、数字数字と言うなよ、とたぶん言うと思います。経験上、数字にこだわり過ぎた会社やプロジェクトは上手くいかなかったナレッジもあります。企業とスポンサーシップが締結したのを見たときに、「あぁ、なるほどね」と人が自然と思うのが僕はいいマッチングだとは思いますね。

さっきのブラインドサッカーの話ではないですが、目薬で目のことをずっと追及していくという文脈でサッカーのスポンサーシップに入るとか、自分のファーストキャリアの企業は野球全体のパートナーをずっとやっているんですね。スポンサー先が不祥事やトラブルがあったとしてもずっとやめないんですよ。その際の対応を自分は経験してきましたし、シリアスな局面も見てきました。そのスポーツの商品で飯食っているわけだから、応援して当然であるという理念があるんです。数字じゃないんですね。

そういうところがサステナブルなスポンサーシップであって、「強いつながりやスポンサーシップする理由」を見つけていく。見つけるのは誰でもいいと思うんですよ。従業員でもいいし、会社の社長でもいいし、誰でもいいんですけど、見つけてあげるのが僕は結構ポイントなんだと思います。

個人的にですがプラスクラスさんと一緒に仕事やったら面白いかなと思ったんですが、上記を外部から見つけることは仕事になると思いますよ。「あの会社とあの会社がくっついたらすごくいいんじゃないか。なぜならばこうこうで…」と。プレゼンテーションするのは誰でもいいんですよ。「なるほどね」と言わせたもの勝ちだと思います。

それこそ強引にやろうとするから1年でダメになったり、3年で結局半分もプロパティ使えなかったり、だまされたー!二度とやらないっ!、という感じになってしまう。数字もお金も大事だけど、もっと大事なストーリー(理由)があるのではないかと僕は強く思うんですよね。長年いろんな会社でやってきて、そう思います。

平地 事業会社としては本当に数字が大事なのは間違いなくて、それを会社の中としても理解をしていってもらわないといけないから、それはやらなきゃいけないけど、でもやっぱりそれをやってきた健太さんでも本質のところではパッションや理念に共鳴するところでスポンサーした方が絶対ハッピーでしょうという感覚に今いるということですよね。

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柏崎 それはたぶん変わらないんじゃないですかね。たぶんグローバルで共通していると思いますよ。ただ各会社によって働いている人の文化、お作法、考えるロジックや順番は結構さまざまだとは思います。

経営層やキーマンを抑えれば良いという会社もあれば、多くの人の合意形成が必要でみんなが納得すればいける会社もあるだろうし、ひたすら数字の妥当性を追う会社もあれば、ブランド企業などは「かっこいいからいいじゃん、うちらしいじゃん」というような理由でOKの会社もある。

ケイパビリティや様々な組み合わせやタイミングはあるんですけど、ビジネスのプロとして、そこに行くのであれば、どうやって会社を理解させるかといったところが仕事の醍醐味かなと思います。100%できていないですけどね。やっぱりそこで、投げないというか、目の前の機会と真摯に向き合い続けるということを自分は選んでいますから、なんとかそこでアウトプットしたいなと常に思っています。

なのでそういう仲間を増やしたいっていうのはあって、(今の会社に)もう5年ぐらい勤めてきているので、ちょっと染まり気味だったり、ちょっと弱ってきたりしたところに「いや、そんなもんじゃないだろう」と始めたのがリファーラルリクルーティングです。自分が業界でお世話になって、自他共に切磋琢磨してきた同年代の方を何人か引っ張ったんですよね。弱っているときに助けてくれるというのが今の自分の支えだったりするんですよね。人の話になってしまいましたが、そういう人を増やしていくというのがポイントかなとは思いますよね。

平地 ありがとうございます。今お話をお伺いさせてもらった中でも、スポンサーと企業の相性というのは「理念で一致する」という話があったり、数字をそこに求めるという話があったり、さまざまな企業の風土というかスタイルがある中で、スポンサーシップと企業の相性というものはやっぱりあるんだろうなというのをお話してきた中で感じている部分です。

スポンサーシップと企業の相性

平地 相性のいいところの見つけ方というか、スポンサーシップと企業の相性というのが今聞いてきた中でわりと1つのキーワードでもあるのかなと思いました。その相性に関する健太さんの考えは何かありますか?

柏崎 優しい日本語で言うと、「まあそうだよね」と「なるほどね」と「え?なんで?」この3つに当てはまるかどうかが目安かと。

「まあそうだよね」というのは大体、事業に紐付いているんですよ。スポーツメーカーとかそれで食っているんだからわかりやすいです。選手に「着せる、着てもらう、かけてもらう、使ってもらう、そうだよね」これはもう相性がいいというか一蓮托生のようなことです。

「なるほどね」というのは増やすべきポイントで、最近だとマネーフォワードさんの「お金を前へ。人生をもっと前へ。」と、マリノスさんの「前へ前へ」というので理念を一緒にさせてるじゃないですか。一瞬、全然関係ないように見えるんですよね。金融系の会社とひとつのチームがああいったストロングな契約を結んでやっていくことって「なるほどね」という感じですよね。事業じゃなくて、理念で見つけた。そこでグリップしていくとなると、成功していきますよね。

平地 メルカリと鹿島アントラーズも、ビジョンなどがかなりフィットするところがあるので、たぶんそこもそういう話なんだなということですよね。

柏崎 「え?なんで?」と客観的に見えるスポンサーシップが続けばいいのですが、なかなか相性というか、答えが見つからないからどうなんだろう?というのもありますよね。もし関係があったら申し訳ないんですけど、僕がすごく疑問に思ったのは、とある化粧品会社さんのメンズラインで海外の有名サッカーチームとオフィシャルパートナーシップ契約を締結しされてたんですよ。有名なアニメのビジュアルでキャンペーンされてたのですが、どこにストーリーがあるのか、ページを掘っていっても僕は答えが見つからなかったんです。これは相性としては正直どうなんだろうと思いました。

自分が働いていたり、外部からコンサルしたり、プロとして携わるのであれば「ああ、なるほどね」というところを狙っていくということが、仕事としては大切かな。事業とやっぱり紐付いているということ、あと理念と紐づいているということ、上辺やこじ付けじゃなくて、ちゃんと見つけられることが相性なのかなと思います。

僕が今まさに自分のキャリアの追求といった意味でトライしたとある世界が注目する国際大会の話なんですけど、パートナーカテゴリーのTier1、Tier2、Tier3というのがあるじゃないですか。Tier1というのはワールドワイドでグローバルで長年スポンサードしている企業さんとか。このへんは卓越しているので参考にならないわけです。その次がゴールドパートナー。

Tier 3がオフィシャルパートナーなんですよね。オフィシャルパートナーの立場では複数社でのアクティベーションの経験がありました。北京(夏季)、ロンドンの時など。あの時は1事業に1社とかの、本来の枠組みの元、事業が紐づいていていた信頼がありましたよね。

商品もその大会で使われているから売れるんですよ。最近だとキッコーマンさんは選手村の食堂で醤油が使われたとかあるかもしれないですが、要はプロダクトを売っていくという事業に紐付いているんですよ。

Tier 2というのは、通信、石油、あと銀行系が多いですよね。収益性は高く、事業規模が大きい。端的に見ると「お金持ちの会社」なんですけど、事業が紐付かないんですよ。だけどめちゃくちゃお金持っているし、こういった会社でアクティベーションができればどんなにスポーツ業界はハッピーになるだろうという1つの僕のトライもあったんです。

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平地 本当にそれは思いますね。

柏崎 なんだけど、やはり相性は悪いというのかな。

平地 関連付けにくいですよね。

柏崎 結局、お偉いさんとか取引先に対するホスピタリティだけで終わってしまったりするんですよ。それも大事なアクティベーションですけど、本来のスポンサーシップに紐づけるには結構ハードル高いなというのは感じましたね。最初は、皆さん志高く集まったそうなんですけども、社内調整と事務局&窓口対応が大半で最終的には「チケット管理・配送センター」と化してしまったそうです。

平地 それは本当に相性の話なのかなと思っているんですけど、今までお話してもらった中でもいろいろなキーワードがでてきたなと思っています。

柏崎さんが目指していること

平地 経験と知見を健太さん自身が持っているというところから、今後のスポンサーシップビジネスに対して健太さんが目指すことや、これから先に見ているものなどはありますか。

柏崎 スポンサーシップのサイクルがもっとライトに、頻繁に回るようなサーキュレーションに持っていくというのが自分のキャリアにとってもいいし、スポーツビジネスの発展、業界の発展にもいいんだろうなと思いますね。仕事に携わっている人たちは何とかそれをメイクしたくて探しているんですよ。

今、産みの苦しみというところなのかなと思います。何年産みの苦しみをやっているんだーと外野からは言われそうですが、今までは、お付き合いとか協賛とか支援とかでやってきたからダメだったんでしょう。マイナススタートですね。僕だけでなく、今、ビジネスとして携わっている人は、まず投資対効果をイーブンにすることを目標にしてると思いますよ。どっちも儲かっていてスポーツ団体も選手も企業側もどっちもハッピーになるということを実現していくというのは自分の中では1つの夢というか目標ですね。

自分はマネジメント経験をするために会社を持ったり、マーケティングコミュニケーションだけでなく、ビジネスディベロップメントなど、少し幅広にキャリアの軸足を移しているつもりなんですけど、スポンサーシップというところにフィーチャーいただくことが多いので、自分のキャリアを肯定するための1つの意地みたいなものはありますね。結局自分みたいな人間というのは、企業にはそんなにいないんですよ。スポーツメーカーとかにはいるかな。

平地 いや、正直いないですよ。

柏崎 大手広告代理店でスポンサーシップやっているという人はいるかもしれないですが、あんまり多くないですよ。外資にいけばいるんですよ。VISAとかペプシとかいくとスポンサーシップのチームがありまして、それ自体がちゃんとした仕事として成り立っているんですけど、なかなかいないんです。

「広報ですか、マーケティングですか、プロモーションですか、スポンサーシップだけやっていたんですか」と聞かれると「それ以外もできます」と言えるんですけどね。さっきの一点突破のような感じでバカにされることもあるんですけど、一点突破の何が悪い?と思うので、そのサイクルを回していくのは1つの目標ですね。

あと、今、事業会社は「協賛アレルギー」というか、結局「パトロンじゃないぞ!」というのを事業会社の偉い方は言うんですよ。「なんで、そんなにスポーツを支えなきゃいけないんだ、放っておけばいい」という人もいるんです。そういう人は、本当のスポーツビジネスの世界を見たことがないんでしょうね。海外のスポンサーシップは結構高貴なものなんですよ。

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平地 それをやっていることによって、憧れを抱かれたり、「すごいねそれ」と言われたりする話ですもんね。

柏崎 僕が感動したのは、2社目に勤めていたときにフロリダのIMGアカデミーに何度か行ったんです。IMGアカデミーにスポンサーシップ一覧の看板があるんですけど日本企業として唯一、自分の勤め先が入っていたんです。その他に何が入っていたかというと、Championとか。そういう中に入っていたりすると、グローバルな意味合いがあるんですよね。

平地 そうなると勝ちですよね。それと同じように扱われるわけですからめちゃめちゃデカイと思いますよ。全く知らない人が見たときは、その会社は知らないけどChampionやゲータレードと同じレベルの会社なんだと思いますよ。

柏崎 まさにおっしゃる通りで、やがてそういう高貴なものという時代が来ると思うんですよね。だから、それを忘れないでほしいです。どうしても日本の今の市場だと「投資対効果」と叫ばれていて、今そのフェーズなんですけども、そんなに煙たいものではないんだということを携わる人は持っていたほうが、いい未来が待っている気がしますね。

平地 投資対効果オンリーでみたら、それこそ販促と言われるものにお金を出した方が投資対効果はあるに決まっているんですよ。

柏崎 一昨年ですか、とあるeスポーツのデンマークの会社が日本に参入するというときに、日本のカントリーマーケティングヘッドはどうだ?というヘッドハンティングがあったんですね。僕はそのヘッドハントで教わったのですが、日系と外資で「マーケティング」という言葉の解釈が違うということです。

平地 そうですね、そうだと思います。

柏崎 外資系ってブランドマーケティングが主流なんですよ。スポンサーシップにも適性というものがあって、やっぱり高貴なものとして理解されてますね。

よくMLBとかでもあるんですけど、「次のバッターは誰」のようなことを子どもに実況中継させるんですよね。その子が大人になったときに、その子や家族もファンになるし、商品も買う。「ポテンシャルマーケティング」という概念で、だいたい10歳~12歳ぐらいの子どもの頃の記憶や印象、子どもたちに夢を与える経験というのはポジティブな理由でずっと印象付けられるらしいんです。そういう長期的なマーケティングの概念というものが(国内では)皆無なんですよ。

(日系では)マーケティング=販売促進なんです。いくらかけて、いくら取って、いくらのコストでという、そこだけなんです。だから少し寂しいですよね。その概念しかないのであれば、企業人としてはそこから始めるしかないですね。まずはそれを達成したら、もう少し長いスパンで見てみようか。というところまで続けていくのも、ひとつの考え方なのかなと思いますね。

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平地 それまでやれたら本当に日本のスポーツビジネス界への寄与は多大なる功績を残すことになりますね。そこまでいけると思うし、一緒にそういう世界観を築きたいんだというのはすごくあるので、それをやれたら面白いなと思いますね。

今の話の中にもまさに出てきたんですけど、「スポンサーシップをすることによってものすごく企業側にも数字という意味合いだけではなくて価値が与えられるんだ」と、「その価値が与えられること自体をまず証明していかないといけない」ということですね。それを証明するために健太さんや僕らがいますよね。証明する1つのまとまりみたいなものがもっと大きくなっていかないとおそらく社会的に認められないと思うし、それができる仲間をもっと集めなきゃいけないし、増やさなきゃいけない。そもそもそんな人いないから育てなきゃいけないというような話が健太さんや僕らのような人たちには、この先のスポーツ産業のためには非常に重要な命題としてあるんじゃないかなと思います。

スポンサーシップビジネス界隈に求める人材

平地 そういう人を集めにいくときに、そもそも「集まってもらいたい人たちはどんな人たちなんだっけ」というような話もあるかなとは思うんですけど、どんなキャリアを歩んでいる人やどんな人材がこっち側に来たときに仲間になりやすいですか?考えなども含めてスッと入っていきやすいでしょうか。どんな人が理想ですかね。

先ほどの話でいうと、コンサル系の人たちはまず無形のものに価値を与えてそれを形にしていくというところに慣れているので、よさそうだという話はあったかなと思います。どんな人材が今後スポンサーシップセールスやスポンサーシップビジネス界隈に入って来てくれると化けそうだなというか、一緒に仲間になれそうだなと思いますか。

柏崎 どっちも要素があるんですけど、おそらく「好きだ」ということは絶対避けては通れないと思います。

平地 それは重要ですよね。

柏崎 スポーツが好きだとかスポーツビジネスが好きだということは、アイデンティティとして絶対必要なものだと思います。別に、特定の種目が好きだとかじゃなくてもいいと思うんです。上がったり下がったりするEvent Letなマーケティング、試合の直前にバーンと数字が上がっていって、どーんと落ちる忙しいマーケティングが好きだとか、人によっていろいろな好きの切り口があると思うんですよ。そういったものに耐えられる、前向きに取り組める、エキサイティングで楽しいと思える人。

好きだということがまずは必要なんですけど、その好きということが先行したり好きということが大半を占めていると、ビジネスマンとしては成り立たないと思うんですよ。要は「昔から特定の競技をやっていて、その延長線上で業界やチーム、球団に入りました。広報をやっています。」とか、最近はないのかもしれないけど、とあるスポーツ団体のガタイのいい人はみんな元選手ばかりだったとか、そういったことがあるじゃないですか。

そういうところではビジネスとしてはExpandしないんじゃないですかね。やっぱりビジネス経験が必要でしょうね。営業でもいいし、PRでもマーケティングでも、システムエンジニアでも何でもいいんですけど、何か強みを持ってから入ってくるというのがいいかなと思う。好きというのと両輪が必要ということなんですよ。

僕はたまたま最初からスポーツビジネス業界の事業会社でずっときているので、あんまり参考にならない人間だと思います。なので40歳前後のこの歳になっても結構学ぶことが多い。弱いところもたくさんあります。西脇さんの例でいうと最初は必ず大塚商会の話をしますよね。わけのわからないノルマを達成する営業マンの真髄の話をおっしゃるんですよ。

あの営業力の基礎があるから今も華々しい功績を残されているんであって、自分は1社目からスポーツビジネスど真ん中だったんですけども、やっぱり2社目に入ったときにP&Gやアメリカンエクスプレスなどいろいろなところから、すごい人がたくさん入社してきたわけですよ。悔しいかな、なんでもできるんですよ。やったことないけど8割ぐらいのクオリティーでスポーツの仕事もできるんです。ニューヨークに行ったときも初対面の現地の広告代理店相手に英語でバーっとしゃべりながら仕上げちゃうんです。僕はスポーツが好きでやってきて全然歯が立たないわけですよ。なんでその人たちができるかというと、やはりマーケターとしての足腰、PRとしての足腰が強い。何かひとつの職種を極めていることは「強み」なんですね。それをポータブルしているからコンテンツが何であれ、たまたまスポーツでもできる。

平地 扱うものが変わったという話ですよね。

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柏崎 それは重要かな。何かひとつ職種を極めるというか、何の業界でもいいと思うのですが、ベースとなるものを経験することがまず重要ですし、そのうえで、好きという気持ちを持っているのは最終的に活きてくると思うんです。2社目の僕の前任がスポーツを好きではなかったんですよ。「なんでスケートのことをずっと見てなきゃいけないのよー」とか言っていたんです。

平地 見ていたいけどな(笑)

柏崎 僕からすると「え?」という感じなんですよ。「自分の立場わかってる?みんなそういう仕事をしたいと思っているじゃん」と当時は思ってました。「夜中の3時でしょソチ。なんで夜な夜な新聞社の入稿担当とやりとりするの?肌荒れするじゃん」というようなことを言うんですよ。「もういーよ、俺やるよ」と思いましたね(笑)。

平地 そういう人が、どれだけ事業会社の中で本当にやりたいと言ってやっている人がどれだけいるんだという話もあるかもしれないですよね。いわゆるジョブローテーション的に致し方なくそこにはまっている人たちもいるから、でもそれだとそれこそ数字にするのは難しいビジネスの中で、そこにパッションがないと一点突破ができない可能性がある。それが素養としては必要ですよね。

ぶち当たる壁が多いからこそ、無形なものを形にしていかなきゃいけないから、一点突破するにはやっぱり好きというマインドはすごく効いてくる。大事になるという話ですね。いい話だなこれは。

柏崎 なので、仕事に対するプライドとか職種に対するこだわりを持っている人は最近の若い子を見ていると少ない気がするなというのはなんとなくありますね。今、日系大手に所属しているからかもしれませんが。

平地 やる内容や売る内容、自分たちの売り物にすごく興味が向いているという傾向は結構あるなと思うし、物も情報も溢れている中で、「これだ」というような思い入れや固執のようなものは希薄になっているのかなと思いますよね。

柏崎 人材としてはやはり必要かな。もう1つは情報のシェア。これは西脇さんも言っていましたけど、成功の価値基準はおそらく各会社によって違うと思うんです。それはその通りだと思うんですけど、「なんで、それをやって、どういう効果があったのか」とか「何が大変だったのか」というのはシェアするべきだと思うんですよね。

やってみようかなと思った人や会社が一歩押されるじゃないですか。だから堪りかねて自分がしゃべるようになってしまいました(笑)。各会社の機密情報を話すつもりは毛頭ないですが。自分のテクニックというか、自分がやったことだったらいい。知的財産が自分に紐付いているのだったらいいと思うんです。この業界は創世記なのでそういうナレッジシェアリングをどんどんやっていったらいいと思うんです。

ただそれを、意味もなく電波に乗せてばらまくのではなくて、思いがあって仕事に携わっている人たちの中でシェアしながら発展させるというのは、僕は一つの戦略だとは思いますね。

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平地 一緒にそれを実現できる仲間を増やしていかなきゃいけないという話や、好事例、よい実績というものも仲間たちと一緒にどんどん発信をしていかないといけないですね。

スポーツに少しでも興味がある企業が結局どう活用したらいいかわからないところからスタートしてしまって、企業の中で「スポンサーシップをやろうと思っているんだけど」と誰かに言っても、「スポンサーシップは全然わからないです」というようなことだと「どうにもならないじゃん」となりますよね。その中でも何かやろうとして結んだら、それこそ目的もKPIも明確になっていなくて「やったけど、お金だけ使っちゃったね」という話で終わってしまいかねない。それでスポンサーシップ、パートナーシップというものの価値を下げてしまうのはすごくもったいないなと思うからこそ、僕らが仲間を集めてナレッジをシェアして業界自体を勇気づけていく活動をしなければいけないんだなということを、健太さんの話を聞く中で今日また改めて思いました。

柏崎 そうだと思うんですよね。どっちかというとビハインドになってしまったんですよね。「ラグビーのワールドカップ2019が成功しました」と言って、そのあとコロナがきました。それでがっかりしたじゃないですか。

次にオリンピックが来てもスポーツに対する投資は40%の企業で誰もやらないということをNHKが放送していましたよね。オリンピックがビジネス的には逆にマイナスになってしまったようで。ビハインドな状態でもスポーツはなくならないわけで、今「部活離れ」「子どものなんとか離れ」とスポーツをやる人が少なくなったと言いますけど、トップパフォーマンス自体は上がってきていますよね。

エンターテインメントとしての価値は上がっていると思うので、産業をつくるところで熱い人たちで盛り上げていくことが向き合っていくべきポイントかと思いますね。

平地 間違いないな。

柏崎 そういった意味で、ノウハウをシェアするのがポイントなのかと思います。

平地 まさにこの企画自体がそのものですよね。ノウハウのシェアはあまりされていないし、やってみようかなというときに後押しできるようなファクトがあまりにもないですよね。業界にそれがないと判断することができないし、それを後押ししていかないとだめだなというところから、このインタビューの対談が始まっています。

だから西脇さん石戸さんにもその話を聞いたし、売っている人たちにもやっている人たちにも聞いたし、そこでさらに幅広くいろいろやってきた健太さんの話を今回聞いて、これが記事化することによって少しでも「やってみようかな」「携わってみたいな」と思う人や、スポンサーシップ自体を「面白いな、うちの理念だったらこのスポンサー合いそうだな」というイメージを持った人が出てくるとすごく嬉しいなと思っています。

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柏崎 まったくおっしゃる通りだと思っていて、僕はスポンサーシップビジネスを盛り上げるのは広告代理店ではないと思います。20年近くずっとやってきていますけど、高く売り飛ばすことが全てではないと思います。

平地 ビジネスモデルがそうですから仕方ないですよね。

柏崎 使い方はパッケージやプロパティに沿うということよりも、所属企業や事業の事を考えて「知恵」でやることが大事だと思いますよ。「こんな使い方ある」「こんな効果が出る」という、それこそプラスクラスさんのような人たちが盛り上げていくというところがポイントなんだと思うんですよね。

平地 これはかなりメッセージ性の強い内容になったんじゃないかなと思います。世の中に今の現状や事実の話と、今後どういうふうにしていけると「このマーケット面白いよ」と伝えられるようにしたいなと思っています。少し時間を頂いて記事として表に出させていただきたいなと思います。

柏崎 やっぱり波及効果なのかな。今、お話を聞いていて思ったんですが、そういう楽しい経験、要は大変なんだけど役得のようなものが多いとも思いますね。

平地 ありますよ。めちゃめちゃあります。絶対にありますよ。

柏崎 ワールドカップのときに「一通り仕事が終わったので帰りますね」と言ったら、ビール券をもらったので記者席に座って試合を見ていたんです。そしたら本田圭佑選手が決めた。そういうときに現地にいたり、内村航平選手が世界選手権で着地するところを目の前で見たり、そういう役得があるんですよ。

平地 めちゃめちゃ興奮するポイントですね。

最後に

柏崎 僕はスポーツ業界の中にいる人に言いたいんですけど、「周りの人に経験させていますか?」と思うんですよ。例えば、マンチェスター・シティ戦で言ったらギャラクシー・エンターテインメント・グループの横浜マリノス戦があった時に、僕のチームにわざわざ転籍してきた、サッカー好きのスタッフがいたんですけど、その子に「見に行っておいでよ」とチケットをあげましたよ。そういう経験するとより好きになりますよね。

パルコにパリ・サンジェルマン(PSG)カフェがオープンした時は、エディフィスとコラボしてPSGのグッズキャンペーンをしたのですが、レセプションに元PSGのマクスウェルが来日してて、自分の伝手で「写真を撮るよ!」とアレンジしてもらったんですが、僕はもうたくさんトップアスリートと写真を撮ってきたから自分のチームの若い子たちに譲ったら、みんな大興奮して、仕事も一生懸命頑張ることにつながっているんです。

だから「波及していますか?」というのは言いたいです。こういう業界は少ないから、みんな知った人たちがFacebookとかでつながるわけじゃないですか。その楽しさというのを他の人にちゃんと経験させていますかというのは問いたいですね。

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平地 僕の美味しいご飯屋さんと同じ考え方です。僕うまい店を見つけたらみんなを連れて行きたいんですよ。楽しい、うれしい、ハッピー、興奮するという気持ちをシェアできると、やる気やファッションというポジティブな空気が出ますよね。

柏崎 最近の僕の作戦は、頭のいい人にそれをさせることです(笑)。今のチームに数名コンサルとか新規事業をバンバン立ち上げてきたすごくクレバーな方がいて、格闘技がお好きなので、今度格闘技のVIPチケットが手元に来たら一緒に見に行こうと思っているんです(笑)。

その体験とか興奮を感じて彼らがどういう風に考えるんだろうと思うんですよ。慣れは怖くて、僕の頭にはもうそういった感覚がないんですよ。だから彼らが経験をしてどういう風にビジネスを組み立てるのか、良い意味で人の頭を使ってみるというのはポイントかもですね。
これを僕は業界の中の人に言いたいですね。自分たちばっかり見に行っていないで他の人にもシェアすべきです(笑)。だから好きな人ばっかり集まって「村社会」のようになっているので、もう少し広げなよーと思いますね。特等席でとびっきりの感動と興奮を脳裏に焼き付けて、このビジネスの源流を知り、仲間を増やすのも立派な仕事です!(笑)

平地 ありがとうございます。非常によいメッセージだと思います。僕が聞きたかったことは全部聞けて、強いメッセージ性を持った内容になったのかなと思いますので、大満足の1日でございました。

健太さん、今日はありがとうございました。引き続き、この話を現実にしていくということを西脇さんもいれてご一緒させてください。

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ゲスト紹介

ゲスト紹介(柏崎健太氏)

インタビュアー紹介(平地大樹)


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