【中編】国内で貴重なスポーツビジネス遍歴をもつ柏崎さんに聞く、企業目線のスポンサーシップ活用術
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【中編】国内で貴重なスポーツビジネス遍歴をもつ柏崎さんに聞く、企業目線のスポンサーシップ活用術

プラスクラス・スポーツ・インキュベーション +C lab

NTT ドコモの「DAZN for docomo」だけではなく、KONAMI、airweave、OAKLEYなどグローバルで、大小数多くのスポンサーシップビジネスやスポーツマーケティングに携わってきた、MANAGEMENT-K 代表の柏崎健太さんにお越しいただき、国内外の企業目線でスポンサーシップについて大いに語っていただきました。

柏崎さんは、ご自身が代表を務めるコンサルティングカンパニー「MANAGEMENT-K」を経営しながら、NTTドコモの社員としてもご活躍されています。

前編では、柏崎さんの自己紹介およびこれまでのスポーツビジネス遍歴についてまとめています。まだ読んでない!という方はこちらからご覧ください。

中編では、企業側がスポンサーシップする理由企業側はどのようにスポンサーシップを活用すべきかなどに触れています。ぜひ最後まで御覧ください!*インタビュー日:2021年12月8日

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自分らしいキャリアの積み方

平地 僕の人生も行き当たりばったりだったというところもあるんですけど、やっぱり流れのタイミングと運でキャリアって築かれているじゃないですか実際。

柏崎 「MANAGEMENT-K」って実は僕の弟と一緒にやっていて、僕の弟がHR領域のプロフェッショナルなんですよ。外資系の人事戦略コンサルとかありますけど、あそこの界隈から今、私と似たような日系大手に入って採用やコンサルティングの仕事をやっているんです。私は行き当たりばったりの感覚派でしたが、キャリアを戦略、分析、客観視、言語化するようになったのは弟の影響があると思いますね。「計画的偶発性理論」とか、英語で言う「Connecting The Dots」とかいいますけど、最近のキャリアビルディングとかワークスタイルのトレンドには共感はしています。

僕もまだ40前後でまだまだ道半ばですけど、何かそういう自分らしいキャリアの積み方というのはあっていいんじゃないかと若い子には言っているんです。

平地 間違いない。それは本当に伝えていきたいですね。

柏崎 キャリアの話は聞かれるので、結構言っていますね。

平地 そのへんはぜひお伝えしていきたいです。最後の方でどんな人材が必要かというお話や、どんなキャリアが歩めてるといいかというようなお話もお聞きしたいなと思っています。

早速このスポンサーシップというお話に入っていきたいと思います。本当にこれだけいろいろなバリエーションに富んだ企業さんの中でスポンサーシップというものを…

僕も健太さんでいいですか?柏崎さんって噛みそうで(笑)

柏崎 もちろん!いいですよ。か行が、Kが多い(笑)

平地 健太さんの経験というところから、いろいろ提言できるものはあるかなと思っていて、それを今日は是非とも聞かせていただきたいなと思っています。

企業側がスポンサーシップする理由

平地 まず企業側にずっといたということがものすごくストロングポイントだと思います。経験としてもバーンと伝えられるところかなと思っていて、企業側がスポンサーシップを使っていく、活用していく視点であったり、取り組みがもっともっと世の中に伝わっていくべきだなと思っています。それが伝わっていくことでスポーツ産業を含めて上がっていくなということを、いつもお話させてもらっているかなと思うんですけど、そこの部分は聞いていきたいです。

企業側がスポンサーシップをなぜ使うのか、なぜ活用するのか、やることに対するWhyがすごく重要かなと思うんですけど、その辺に対する健太さんの考えをお伺いしたいです。

柏崎 そこの理由がはっきり言って曖昧な企業が多いと思うんです。それこそ「パートナーズシップ」のシステムに書いていることと、僕がここで喋っている部分がほとんど一緒だから、もう自分のような人間は必要ない時代になったんじゃないかということを先ほど、待合室で話してましたよ。

平地 それをむしろ聞かせてほしいです。

柏崎 CSR、ブランディング、商品に紐付いた販売促進とか、あとは事業そのものに何らかの形で貢献する。大体この4つかなと思うんですね。PSIのイラストはほとんど一緒だったと思うんですけど、たいてい今までのケースでいくと、多くの企業がCSRとかブランディングというところで逃げてきているというか。今でも多いと思うんです。詳細は言えないんですけど、意図せずスポンサーシップをしている。

で、「何が目的で何をやりたいんだっけ?」というのが後付になっていたりする。よく西脇さんとも話すのですが、権利を使い切れるように契約後に運用するとか、使い切れない場合はどのようにクローズするか、という話をするのですけど、そもそもそれをやったことのない多くのジョブローテで回ってきた人がやるわけだから、「CSRでイメージ良くなったよね」とか「社会貢献になったよね」「スポーツっていいことでしょ」というようなことで、まとめてるようでは続かないんですよ。

平地 なるほど。

柏崎 あとは「オーナーが好きだから」とか「会社がずっとやってきたからやめられない」とか、掘れば掘るほど曖昧な企業は多いんですよね。年代的に言うと、10年ほど前まではロゴ出せます、ヘルメットにシール貼れます、看板出せます、プログラム表紙でますよ、冠スポンサーだから大会の前に名前入りますよと。そのパッケージですから、今でも広告代理店さんはその内容で売ってきたりします。

私は、たまたま企業側を渡ってるので気づきますが、提案する会社を見て金額を変えているだけで、全く同じ内容ですよ。そもそも、内容と金額感が合ってるのか、わかる人がそばにいないんですよ。

平地 なるほど。受ける側の問題ですね。

柏崎 売る側も「わかるやつはいないだろう」という前提でしょうね。スポーツスポンサーシップに馴染のない企業や、ジョブローテーションの多い日系大手などは、いい「カモ」に見られてるでしょうね。

平地 そういうことですね。そこからはもらえそうということですね。

柏崎 現場はそういう感じになっているので、そのあたりは課題でしょうね。最近ですよね、「スポーツビジネス」という言葉が急に出始めてきて。今までスポーツビジネスっていう言葉は、今ほど聞かなかったんじゃないかと思うんです。

平地 そうですね。全然なかったと思いますよ。

柏崎 スポーツマーケティングというのはあったんですよ。スポーツマーケティングを「スポマ」とか「SPM」というのは業界では共通言語だった気がします。オリンピックが来る、スポーツ庁ができる、だから15兆円市場ができるとなって、そこからスポーツビジネスと言い始めた気もしますね。

私の今の所属している企業をはじめ、スポーツビジネスをやっていないところがやり始めたんです。そういう会社ってドライですよやっぱり。超ドライ。投資対効果とさっきの4つ(CSR、ブランディング、販売促進、事業連携)を言いましたけど、これからは事業連携を見つけて一緒に収益を上げていく「パートナーシップ(日本語では「協業」)」が理想とされながら、パトロン型の「スポンサーシップ」とか「協賛」という言葉が日本では少なくなっていくんじゃないかなと個人的には思います。

投資する側、される側が一緒になって収益を作っていく。「スポーツに投資する価値を一緒に育てていきましょう」というのが、今の事業会社側のメッセージなんじゃないでしょうか。そうじゃないとお金を出したいけど出せない。スポーツIP側からするとやはりゆるいですよね。根拠のない数字でお金をくださいと言っているようにも見えてしまって残念。最近の例だと協業も配信権販売も、実証実験も何から何まで全部「協賛」という言葉と同じく解釈するIPホルダーがいました。言葉が違えば意味も違うんですけど。日本語なんですけどね。

平地 そういうことですね。助けてもらう側ですよね。

柏崎 僕は企業側でしか経験が無いのですが、複数社、国内外様々なフェーズの企業で働いてきてそこが今1番課題なのかなと思いますね。

平地 なるほど。どうすれば課題をクリアできるか、Whyをどうすればもっと意識できるようになるか、ということについてはどう考えますか。

柏崎 すごく簡単にいうと、「価値と価格を合わせていくということじゃないでしょうか」結局、何が価値でその価値に対して数字が付いてくるというのがビジネスなので、いわばそこを同じ目線で考えられるかどうか。

僕個人の経験から来る見方ですが、日本市場が噛み合っていない。IPと事業会社が噛み合っていないということなんだなと思っています。日系はちょっと近視眼的なんですよね。なぜかいうと、2社目にいたときは外国のスポーツビジネスを垣間見て、3社目も外資系なのですけど欧米のスポーツビジネスはIPとのアクティベーションを活用して、コンシューマや提携先候補、世論などのステークホルダーを長期的に育てていくという目的や概念があって、日本とは全然違うんですよね。

誤解の無いように付け加えると、日本市場が良くないと言ってるわけではなくて、その国に合ったやり方で噛み合ったところをスターティングポイントにして先進的な国に近づけて行ったらいいだけだと思うんです。よく「日本のスポーツスポンサーシップは欧米に比べて遅れている」とコメントしている批評家みたいな人がたくさんいますが、実際にリアルなビジネスの現場で働いている立場から言わせてもらうと「だから何なんですか?」とは思いますね。とりあえずは、現実から一歩先を見てチューニングするのが「仕事」な気もしますね。

ある事例でいうと、とあるOTTが海外から入ってきて、放映権料を100倍近くに引き上げて購入したケースもありましたが。スポーツの価値をグローバルレベルで見ていこうということで投資しているわけなんですよね。まずそういう目線をある程度日本企業も持った方がいい、持つことは考えてもいいんじゃないのかなと思います。あとはIP側、スポーツ団体側は「世の中やビジネス視点から見た客観的な『価値』」を提供することだと、個人的には思います。

平地 その価値をIP側も提供していかないと、その数字自体がただのボランティアみたいな話になっちゃうから、返さないといけないですもんね。

柏崎 今はそう思いますね。事業もそれに乗っちゃうと破綻しちゃいますからね。事業会社のお金なので、できないものはできないと言わないとですよね。僕も昨日も今日も現場に入っていますけど、IP側も「どこどこがあれぐらいだったから」と高いところに(金額を)合わせたがるんですよ。けど根拠がないんですよ。「じゃあどうするんだ、ウチの会社を潰そうと思っているのかー!?」という感じなんですよ。だから僕が言うのは「価値と価格を合わせる」まずここからがスタートだと思いますね。

そうなると相当低い金額になるかもしれないけど、「現実を見る」ということは結構ポイントなんじゃないかなと思います。

平地 そうなったほうが、実際に関係性、価値提供も含めて合ってくるから、関係性としても対等になるので正しい関係性になる気がします。

柏崎 僕はそう思いますね。平地さんと同じ世代ネタになりそうですが、我々の小さい頃にAIRMAXブームがありましたよね。確か95がトリガーだったと思いますが、凄いプレミアムがついて、一足数十万円とかになった時もありましたよね?けど、オフィシャルなスポーツショップに入荷した時の定価は1.5万円くらいだった気がします。

多くの人が欲しいと思うから、オシャレだと思うから、数が少ないから、デザインが優れているからなど様々な「価値」が認められたので値段が吊り上がったというもので、作り手のメーカーさんやオフィシャルなスポーツショップが自分たちで値段を吊り上げてるわけではなく、そこは「定価」で売ってたわけですよ。この例とこのネタを一緒にするなーとか言われそうですが、元締めが根拠のない価格を付けるのは、結構、いろいろ難しいようにも思います。

平地 まずその課題のクリアが今の日本国内においては難易度が高いのかなと正直思うところではあるんですけど、そういう課題がありつつもそれでも今スポンサーシップというもの自体が国内でももちろん市場としてもあります。

企業側はどのようにスポンサーシップを活用すべきか

平地 今やっている人たちもいる中で、事業会社側がスポンサーシップのお金を払った側から現実的に数字の部分で返ってくるようにできるか、そのあたりが結構重要な話かなと思うんですけど、企業はどうスポンサーシップを活用していくべきか、健太さんのアイディアやお考えを聞かせてください。

柏崎 繰り返しになりますが、目的を明確化するということに尽きると僕は思いますね。ストーリーを作って目的を明確化して会社と握ること。その握りは変えないこと。そして目的を途中で変えないことですね。

スポンサーシップってしっかりしている提携先はプロパティ(権利の内容や項目)がしっかり存在はしますが、そもそもスポーツというコンテンツは結果が約束されていない不確実性の高いコンテンツですし、お客様やメディア(パブリシティ)も複雑に絡み合ってくる結構難しいヤツです。仕事として関わる人も様々な立場で絡みますので、最初の握りを変えないことが成功のポイントかと思います。

最近見たストーリーでなるほど!と思ったのは、目薬の会社がブラインドサッカーのスポンサーをしている、というもの。わざわざ説明を聞かなくても共感できるし応援したくなりますよね。販売促進活動などでKPIを設定するのであれば数字での評価になるでしょうが、最近は「非財務指標」とか言った、便利な言葉もフィーチャーされるようになりましたね。それぞれのケースに合わせて握ったらいいと思います。ちゃんとした事業会社ってドライですからね。

平地 儲からないと死んじゃいますから。

柏崎 オーナー企業にも数社勤めたことがありますけど、結構アイデンティティがあるから例えば「うちの会社は野球をずっとやっているんだ、野球のゲームと言ったらうちに決まっているんだ、野球界全体のスポンサーやるに決まっているんだ」「サッカーもうちに決まっているんだ、だったら日本代表などサッカー全体を応援だ」というのは、長期的なブランディングを理念に基づいて投資し、育てているところはある。 けど、そうじゃない、事業にも紐づいてない、やったこともない会社の方が多いと思うんですよ。結果、近視眼的な採算度外視の投資になってしまってる事も多く聞きます。

平地 そうだと思います。

柏崎 目的を明確化することだと思うんですよ。僕は今、本業も副業もビジネス収支を背負ってやっているので、実際やったらリンクするかという試算のシミュレーションを何パターンもやります。

それこそ2018年に渋谷でやったスポーツラウンジのときは、PRというKPIで握ったんです。PRだと言っていながら、あれだけ大きなことをやると「じゃあ受付ブースどうしますか」「ここで販促しましょう」「近隣のショップから人を呼んできて、送客してみんなで刈り取りやりましょう」となったので、やめろと言ったんですよ。なんでやめろと言ったかというと、KPI・目的がブレるからなんですよ。「だからあれはPRです」と、「日本国内に対して、こういうスポーツビジネスの未来の世界があるんです。それに、うちの会社が事業で絡んでるんです」というPRなんだと言ったんです。その時のチームの構成や組み合わせも良くて、もう一枚岩になってたからそう言ったんです。

広告媒体換算などの部分で、自分が各社で関わった過去のKPIや実績の数々をベースにKPI算出をして達成するということで進めました。もし刈り取りというKPIを横入れでやったらおそらく評価が下がったし、レポートの際にモメた可能性がありますね。そういうプロジェクトマネジメントを事業会社側はちゃんとやらないとダメですね。

平地 そうかもしれないですね。

柏崎 もし違うKPI入れたら、「こんなにお金かけて全然刈り取れなかったじゃん、何百人しか取れなかったじゃん」と、そっちに引きずられてしまうんですよ。知見や経験のない人たちが、なんとか根拠をこじ付けたくて、いきなりデジタルマーケティングの一指標(CPA)を得意げに当て込んだりしてくる。だからそこの目的の明確化ははっきりしたほうがいいと思います。やっぱり握りなんですよ。

西脇さんの記事を読んだときに「(担当の)人が変わるタイミングがある」ということが書いてあったんです。西脇さんは変わらないんだけど、相手の担当者が変わる。レイヤーが変わると、コミュニケーションが変わる。それはたぶんダメなんですよ。事業会社側の課題だと思うんです。それができている会社とそうでない会社で成功の確率というのは違うんじゃないかと思うんですよね。少なくとも僕の経験上はそうでした。だからそういうプロフェッショナルをたくさん育てるというのは僕は業界のためには大事なのかなと思います。

平地 ありがとうございます。

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後編へ続く

今回は中編ということで、以下について書かせていただきました。
・自分らしいキャリアの積み方
・企業側がスポンサーシップする理由
・企業側はどのようにスポンサーシップを活用すべきか

後編は、最後に上がった”スポンサーシップの目的の明確化”についてどうやってできるようになったのか、スポンサーシップと企業の相性スポンサーシップビジネス界隈に求める人材などについてお話しいただきます。

ゲスト紹介(柏崎健太氏)

インタビュアー紹介(平地大樹)


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PSIはスポーツのマーケティング・クリエイティブエージェンシーです。主にデジタルマーケティングを活用して、集客のお手伝いをしたり、デザインや映像の力でスポーツの魅力をもっと引き出したりして皆さんに届けています。