2021年に注目しているスポーツビジネスのマネタイズ手法
あけましておめでとうございます、PSI代表の平地です。2020年、新型コロナウイルスが蔓延し、スポーツ業界は大打撃を受けました。スポーツ業界のマーケティングやクリエイティブ支援に携わらせてもらっている僕らもまた、大打撃を受けました。
設立から3期連続で大幅な増収増益を繰り返してきたプラスクラス・スポーツ・インキュベーション株式会社(以下PSI)でしたが、4期目にして大幅な減収減益となりました。明らかに4月から7月くらいでスポーツビジネスは止まった。2025年に上場!と掲げている身としては前途多難な2020年オリンピックイヤーとなりました。
と、昨年の振り返りはここまで。2020年末から不死鳥のごとく爆上げしてる僕らとしては、この2021年が本当に楽しみで仕方がない。色々な意味で、あけましておめでとうございます!と改めて伝えたい。そして、支援チーム数は2021年1月現在、71クラブになりました。間違いなく国内トップだと自負しています。ありがとうございます。
さて、年月は経つもので、PSIは2021年の2月3日(マイケル・ジョーダンの背番号にちなんで設立した)で5期目を迎えます。こんな環境下でもたくさんの発注をくださるクラブやリーグ、協会に感謝し、粛々と業界のためにも自身たちが成長・進化していかなければなりません。
PSIが今まで大幅な増収増益を達成できたのは、完全にビジネス設計の勝利。もちろん、実現してきたのは今いるメンバーのおかげ!は当然の話だけど、ビジネスモデルにおいては↑が全て。今まで日本のスポーツ業界において「スポーツにデジタルマーケティングを!」と語られてくることは多くはなく、「クリエイティブの力でスポーツの魅力を伝える!」ということもほぼ語られてはこなかった。
そんな中PSIが2016年に爆誕し、北海道コンサドーレ札幌様、千葉ジェッツふなばし様と立て続けにお仕事をいただき、良い効果を残せたことでクライアントの輪は拡がり、業界内で現在の立ち位置を確立することができました。本当に全てのクラブ様・リーグ様・協会様に感謝です。
さて、本題に入りたいと思います。平地が2021年にしっかり取り組んでおきたい!と考えている注目のマネタイズ手法をご紹介したいと思います。激動のスポーツビジネス2021年を生き抜くために少しでも参考になれば幸いです。
スポーツクラブの今までのマネタイズ
PSIの掲げるミッションを改めて。
今でこそコロナ対策として会場を100%満員にすることはNGですが、50%集客や1万人MAX集客だとすれば、まずはその状況下での満員を目指してクラブやリーグを支援する。言わずもがな、集客が最重要項目なスポーツビジネスなのですが、ここでは再確認ということで日本のスポーツビジネスにおいてよく語られる大きな収益軸をおさらいしたく。
1. スポンサー
2. チケット
3. マーチャンダイズ(グッズ)
4. スクール
5. 放映権/分配金
6. 選手の移籍金
最優先にチケットを!とPSIは伝えてきた。もちろん、withコロナにおいても(もしあったとしたらafterコロナにおいても)やはり集客がスポーツビジネスの肝になるでしょう。むしろwithコロナにおいては、大人数が集まって何かひとつのモノに興奮する!という場がスポーツの会場以外になくなる可能性すらある。だからこそ、そういった環境を創り出せるスポーツには価値がある。
とはいえ、今までの集客の50%になってしまうし、こんな状況下でチケット代金を値上げすることもできない。だから大幅な収益ダウンはまぬがれない。そういう状況に今クラブや球団はあります。つまりチケット収益が半減する中で、スポンサーやグッズ、スクールなどの収益で巻き返さないといけない。ただスクール事業も集団での実施が難しい中で厳しい現状があるでしょう。となると、スポンサーとグッズへの期待が大きくなる。
グッズは来場者が減ることから、ECでの売り上げが肝になるでしょうし、スポンサーも現地や会場でのアクティベーションがしにくくなることから、オンラインでの取り組みやコンテンツでの訴求が求められることになりそうです。EC、オンラインコンテンツ、それでも興行があることからチケッティングも重要で、全てのコミュニケーションを実現するには、CRMやMAの活用が必須になるでしょう。スポーツは、よりデジタルを強化しなければならない時代になってきています。
チケッティングの規模が限られる中で求められるマネタイズの多角化
上記のことからも、これからのスポーツビジネスのマネタイズはより多角化や多軸化が求められる。ただ試合という興行のみを売りモノにしていては先細りは避けられない。2021年には前述の1-6以外にも大きな収益軸を創り出していく必要がある。そこで僕なりの視点で注目できそうなマネタイズ手法をいくつか挙げてみます。
7. eスポーツ
8. 投げ銭やクラファン
9. トークン(仮想通貨)
10. 外資マネー
11. クラブの代理店(ハブ)化
12. クラブのメディア化
ひとつずつ簡単に説明していきますね。もしもっと深掘りしたい項目があれば直接Twitterにでも連絡ください。こちらまで。
eスポーツは新しい収益軸になりえるか?
そろそろ国内でも大きなウネリになってもいいでしょ?2021年に注目!なんて言葉自体が陳腐になってるべきじゃないのか?そう思っているのがeスポーツです。結論としては収益軸になると確信しています(7)。eスポーツには大きな可能性がある。すでに海外では大きなお金を動かす原動力になっているこの収益軸で国内クラブが大幅に増収した事例をまだ耳にしない。ハッキリ言って、おかしい。僕が知らないだけかもしれないけど。もっとeスポーツプレイヤーは市民権を得るべきだし、憧れられるべきだとも思ってます。誰かプロデュースさせてくれたらいいのに(笑)チャンピオンズリーグの前にeチャンピオンズリーグがある。こんな世界観を日本でも創り上げていけるはずです。
スポーツ以上にある意味スポーツなのがeスポーツだ。人種や性別、身体的な特長やハンデも関係なくプレーすることができる。まさにインクルッシブな世界がeスポーツにはある。サッカーで言えばFIFAがあり、実際のサッカーではプレイヤーだけでも11人以上が確実に絡むビジネスであり、なかなか世界へ臨む切符もない。一方のeスポーツのFIFAではプレイヤーという視点では1人で、かつ世界大会にも(形式や様式は諸々あれど)申し込めば臨める。国内クラブでもリアルサッカーでは世界大会に臨めなくても、eスポーツサッカーでは挑戦できる。こんな可能性がある分野があります?世界的な大会においては賞金も大きく、組織としてもコンパクトに実施できるので利益率も高くクラブ運営ができそうだ。
しかもターゲットも幅広い。だからスポンサー収益も望める。子どもから大人、高齢者まで顧客になりえる。スポーツチームの運営ではアプローチできない層にもアプローチできる可能性を秘めている。特にYouTubeでもゲーム動画が人気カテゴリーであることは明白で、きっと子どもは本田翼氏が俳優(女優)だと知らないでしょう。ダルビッシュ選手がMLB選手だということも知らない可能性もありうる。うまくクラブ運営の中でリアルとゲームでコラボできればすごい可能性はあるし、リアルチームの選手をeスポーツ選手へ育て上げるのも、もしかしたら面白い取り組みなのかもしれない。
投げ銭やクラファンに未来はあるか?
今、日本のスポーツビジネス界でも投げ銭やクラファン(8)が乱立している。どのソリューションや機能を使うか?という意味では法律やプラットフォームとしての強みなどをベースに判断する必要があるが、それ以上に投げ銭やクラファンを実施する際に重要なのはストーリーだ。
投げ銭したくなるコンテンツが創り出せてるか?クラファンで応援したいと思えるストーリーがあるか?その1回キリで終わりになってしまう設計になってしまってないか?投げ銭やクラファンにおいては『応援消費』というキーワードがポイントになりそうだ。応援する気持ちをお金にする。今まで日本という国において苦手だったスポーツをビジネスにする、というワードそのものの体現に似ている。
法律もしっかりとクリアできているEngate、数クラブでスポンサーと並行して活用されているpring、マイナースポーツでのPlayer!などが有名どころ。2020年にPSIと業務提携をしたEngateにおいては、昨年末今後の発展のためにバックヤードのシステム改修を終え表示速度なども改善した。そして今まさにフロントであるUIやUXにおける改修を進めています。より良くなるEngateにはぜひ期待していて欲しいです。デジタル屋であるPSIとしての叡智を乗せてもらって、より良いサービスとしてファンやクラブにデリバリーできる予定です。
大きな可能性を秘めているファントークン
トークンは今後確実に注目されるでしょう(9)。世界的なスポーツクラブが活用していることで有名なSOCIOSも日本に上陸しました。すでにバルサ、ユベントス、PSGなど様々なビッグクラブで活用され、世界各国では小さなクラブでも活用が始まっています。まだトークンの活用自体も国内では難しい状況ではあるものの、サンドボックス制度を活用してPoCされ、その後必ずや法改正され、日本でもうまく活用される時期が来るでしょう。そこに取り組むcanow社には期待大です。
ただ、短期的には国内よりも先に国外でトークンを発行し、マネタイズしていく動きが活発になると良いと考えています。未だに根強くスペインで人気があるイニエスタを擁するヴィッセル神戸やタイで人気なチャナティップを擁する北海道コンサドーレ札幌など、海外選手の出身の国で展開すると良いカタチで活用できるはずです。選手の出身国でファントークンを活用したマーケティング活動をすることで、トークンの価値が上がり、発行したトークンの売買が行われることになれば、クラブは興行収入以外で資金を集めることができます。
説明さえ受ければ、実にわかりやすい仕組みなので食わず嫌いせずに情報収集から始めてほしいですね。いつでもPSIは協力できるよう、すでに事例を仕込みつつあります。ココも期待していて欲しいところです。
もっと強化すべき外資(特にアジア)マネーの獲得
トークンの流れからもそうですが、いかに外資の資本を取り込んでいけるかも日本のスポーツビジネスにおいては急務だ(10)。国内の景気は今後先細っていくことは目に見えている。もちろん強固な企業、新鋭企業、と国内でも有数の企業はあり、そういった企業とパートナー関係(スポンサー)を結ぶことも重要だが、やはり国外には想像を絶する金持ち企業がある。悔しいかな、ある。そういった企業とパートナーシップを結んでいくことも日本のスポーツクラブにおいては必要性が高まるでしょう。というより、世界はすでに動いていることであり、日本のスポーツクラブも、と言えようか。
すでにJクラブでも実績が出始めていて、Jクラブのスポンサー企業においても上手く東南アジア進出をクラブと連携して進められている企業がある。東南アジアにおけるスポーツ教育者の人材不足から、日本国内クラブのコーチ人材や教育ノウハウを輸出する価値が一定数あって、それを提携の材料とし、東南アジアのクラブと提携する。その提携する契約の中で東南アジアのクラブ側のパートナーやスポンサーとの繋がりをもらえることを条件に入れ込むことで東南アジアへの道を信頼できる筋から開拓することができるのは取り組み方として良さそうだ。東南アジアにおいてはこの「信頼できる筋」というのが本当に大事で、実際のところ僕も携わったPJがポシャったことが多々あります。海外に関係が持てれば、クラブは大きな意味でもハブになることができる。これは今後におけるキーワードになる。
コロナ禍で改めて分かったクラブの存在価値
それは地元経済圏において全てのハブになれる、ということ(11)。コロナ禍で苦しんでいるパートナーやスポンサーのサービス紹介をクラブは積極的にしました。まさにこれがホームタウン活動であり、その地元に根差すプロクラブである存在価値と感じました。クラブは企業とファンのハブになれる。上述したように、海外とのハブにもなり得る。そして何よりも前に、国内においてはスポンサー間のハブにもなれる。
1クラブが結ぶパートナーシップ=スポンサーは百数社から数百社まである。そんなパートナー企業・スポンサー企業と組んでファンにサービスを提供できたら?上述のようなトークンを活用してクラブをハブとした地域経済圏を構築できたら?BtoB的にスポンサー同士のマッチングを(より)行うことができたら?スポンサー企業に全く新たなサービスをクラブが提供できたら?数百社の海外進出のハブに日本のスポーツクラブがなれたら?地域とのハブになるスポーツクラブが、まさにビジネスにおいてもハブになれる可能性を持っていることをまだ気づいているクラブは多くはない。
少ないながらも、気づき始めてきたクラブと今コミュニケーションを取っており、PSIの開発中の新サービスでクラブのハブ化を加速させようとしている。クラブ、企業、人、地域、そして海外、この全ての経済圏の中心になれる可能性がスポーツクラブにはある。これが今後最大のビジネスバリューになると確信してます。
ネット配信という閉じた世界でのスポーツ観戦
やべっちFCがテレビの世界からいなくなった。そして気付けば野球がゴールデンタイムではほぼ見られなくなった。まさにテレビでスポーツが流れない世の中になってしまった。スポーツニュースで断片的に紹介されるだけ。この先、スポーツ団体としてはOTT(ネット配信)に傾倒していくしかない選択肢を取ることになった。今後はリーグ提供の試合映像だけでなく、クラブごとに工夫したVOD映像がより配信されていくでしょう。それ相応の努力なくして新規の会員獲得も、視聴時間の増加も考え難い。そうなると、素材集めの重要性がやっと浸透し、映像素材(アセット)そのものの重要性も増すでしょう。
とはいえ、未だに最強のアテンションはテレビです。これだけテレビは観られなくなった!と言われる昨今だし、僕もテレビはほぼ観ないけど、テレビでNetflixやAmazonプライムは観るから、地上波テレビ放送が観られなくなった、と言うのが正しいのかな。でも実際はどうか?テレビで取り上げられたお店は行列を作り、テレビで取り上げられた or 人気を博したアスリートのSNSやYouTubeは格段に見られるようになっています。まだまだテレビの力はある。ありまくる。
ただ、この先もずっとそうか?はわからない。特にスポーツというコンテンツにおいては、未だに力のあるテレビからコンテンツとして除外されつつある。そして、実際にテレビと接する時間よりもSNSと接する時間が爆上がりしてるのも間違いない。これは皆さんも肌感覚としてあるはず。隙間時間≒可処分時間はスマホに首ったけだ。
そういう観点からも、やはり今後重要になってくるのは、SNSでのアテンション作りになる。日本スポーツ界においては、テレビでのアテンションが減りゆく今、とにかくSNSにおいてプレゼンスを上げ、顕在層にも潜在層にもアプローチしていきたい。そして、実際にSNSで語られる(UGC)ように仕掛けていきたい。
メディア化するクラブ
SNSで語られることが多くなれば(UGC)、アテンションが直近のテレビを上回る可能性はある。SNSで気になった人はそのクラブ名ないしは選手名などをSNSないしは検索エンジンで検索し、オウンドメディアが見られることになる。クラブが保有するウェブサイトやSNSが自社メディア化できていれば、そのメディアを活用することでマネタイズしていくことができそうだ(12)。ただ各プラットフォームに情報を掲載しているだけのクラブはそうはなれない。さらには会場そのものもメディア化することで、オンオフ合わせたメディアミックスの提案がクラブとして企業へ提案できるようになるはずです。そこでも今までと違ったマネタイズができる可能性は大いにある。ここでは5Gの活用もキーワードになってくるだろう。
クラブとアリーナ/スタジアムの一体経営の重要性
上述のことも踏まえると、会場=ファシリティの改善はマスト項目になりそうだ。観る価値を高め続けるために、アリーナやスタジアムの自前化、そして新設ないしは改修が必須だ。球団と球場の一体経営が肝、というのはスポーツビジネスにおいてはやはり重要なポイントとなる。リアル(オフ)のメディアとしてアリーナやスタジアムを扱えないのはとても厳しい環境だというのはすでにスポーツビジネス関係者であれば周知の事実。ここは向こう5年は国内で主に語られていく内容になるでしょう。
2022年以降の流れは?
正直全くわからないです。何も予想がつかないというのが正直なところで。この2021年をwithコロナで過ごすことで少しずつわかってくるんだろうな、くらいでライトに捉えています。ただ、その中でも確実に動きがあると思っているのはベッティングです。スポーツを題材に賭けをする、スポーツベッティング。国内には現在totoがあり、2022年にはBリーグの試合も対象となることが衆院本会議で可決されました。このtotoだけでなく、海外でよく語られるFantasy Sportsなども参考にし、国内ならではのスポーツベッティングの仕組みを見出していくと良いのだろうな、とおぼろげながらに考えています。
100%集客OKとなった時に
そろそろ本記事も〆ていきます。上述の7から12まで、この中で3つくらい実現できていたとすると、50%集客が100%集客になった時に非常に大きなインパクトを生むと確信しています。集客が今後もスポーツビジネスにおいては肝であることは間違いありません。大したロジックはないですが、50%集客でも生めていた↑の事業は100%集客になった時により加速するはず。100%集客になったタイミングでリアルイベントもドンドンGO!!という認識なので、より上述のマネタイズ手法の活用も盛り上がるはず。チケッティングの収益が倍になるだけでなく、その他の事業領域(マネタイズ手法)でも倍とは言わず、大幅プラスに働くことが予想されます。
要は、仕込んでいくなら、まさに今なのだ。今このタイミングで収益化の多軸化は検討しなくてはいけないし、未来のためにも今仕込むべきだ。僕は「コロナだからね...」という言い訳は2020年夏くらいに置いてきた。もう2021年だ。オリンピックやパラリンピックがあろうがなかろうが、スポーツビジネスの事業は発展させていかなければならない。進化しないビジネスは廃れて当たり前。当事者がまずここを認識し、日々邁進するしかないですね。
2021年も、PSIはスポーツビジネスを止めない! #本気ならPSI 。